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2009/12/28

A town called hypocrisy

ショートショート。
脅威の3ページ(41文字×38行)…!俺にしては短っ。
ファンタジー向いてない事を確認した次第。
現代にするとサラリと行くよ自分。

着想はただ今だだハマリなブラウザゲーム・Mob Strikeから。
※マフィアになって、殺伐としたお仕事をこなして、他人を殴って奪ってするゲームです。特にビジュアルがあるわけではないので、本人の妄想力が何よりの糧。

タイトルは lostprophets のアルバム:liberaiton transmission の同名曲から。
※別にこんな曲じゃないよ。


 空気が湿っているのは、この街のどこかで誰かが泣いているからだ。
 そんなことを言ったのは誰だったか。あるいは部屋に積んだCDの中にそんな歌でも入っていたか。多分、そいつも泣きたい気分だったんだろう。
 ただそんなことを言い出したなら、豪雨で沈む勢いのはずだ。
 この街に、そんな奴らは多過ぎる――
 と言ってもこの街には嘘つきしかいないから、その涙も本物とは限らないのだけれど。

   # A town called hypocrisy

 べっ、と勢いよく唾棄されたそれは――唾液と言ったところで血液の含有量が随分と多い――排水溝の隙間をキレイにすり抜けて、下水路へと堕ちていった。別に狙ったわけでもない、ただの偶然。吐いた方も確認などしやしないから、その確率を誰かが計算することもない。この街で起きている多くのことはそんなものだ。流れた血が行きつく先はせいぜい下水、ひょっとしたら誰かが洗い流したりするかもしれない。けれど大して誰も関心を払わない。あまりにも日常的で、サイレンが聞こえない瞬間の方が少ないくらい。まず警察の方が犯罪に飽きている。それ以上に市民の方も飽きている。お偉方は犯罪組織と繋がっているし、犯罪組織は当然警察を丸めこんでいる。典型的に治安の悪い街。そこに好き好んで居座る連中等みな似たようなもので、どうしようもないくらい、命の価値が低い街。モラルなど、1ドルの価値もない。あるいは1セント硬貨よりも軽いもの。
 死にたくなったら正義を叫んでみればいい。あえなくあっさり流れ弾に被弾する。
 もう一度口の中に溜まった赤を吐き捨てて、口元を袖で拭う。べっとりと付いた異色に頓着せずに、そのまま煙草を咥えれば、当然フィルターが血を吸った。安物の極み、使い捨てライターは壊れてはいなかった。火を着ける。発癌性の通過率の低下に舌打ちをしながらも、思い切り吸い込んだらば思ったよりも喉を焼いた。肺を通した煙を吐き出しがてら、首を巡らせた。落ちているのは今自分に向けられていた銃口とそれを持っていた男。生存に対して興味はなかったが、持っていた鉄パイプを投げつけて見れば身じろぎしたので、とりあえずまだ死んではいないらしい。とはいえ、手加減などする気もなく、振りぬいた鉄棒の打撃を受けて無傷とも言えはしないだろうが。
 先に手を出したのはどちらだったか思い出せもしない。そもそも理由すら覚えていない。多分は目が合った、肩が触った、あるいはヘッドフォンの音漏れか――所詮その程度だろうし、気にする気もない。その程度の理由で人は人を殺して生きていける。よくあることに過ぎない、日常の風景。
 煙草を咥えたまま、倒れた男を見下ろした彼にも思う感情は、特にない。地に投げ出された指に絡まった銃に手を伸ばす。ベレッタ。量産性の効く、大衆向けピストルの代名詞。残弾数は13発。鉄パイプで弾いた瞬間に聞いた銃声もそんな数。暴発に近い発砲が標的を掠めるわけもなく、申し分のない無駄弾。それは安全装置をかけてポケットに突っ込んだ。
 治安がどれだけ悪かろうと、銃声は確かに響いたのだから、面倒事に囲まれるのも面白くはないと、その場を後にしかけて目についた、人でも入りそうなスポーツバッグ。中に札束でも入っているのだろうかと、ジッパーを下して、
「――げ」
 呻いたとも言えない意味のない音を零す。
 中に丸まって詰め込まれていたのは、薄手の布に覆われた装いの小柄な女――少女と言ってもよさそうだった。一瞬死体かと思い、指を伸ばせば暖かい。思いつくのは誘拐か人身売買ぐらいで、次に抱えたのが、
「めんどくせぇーなー」
 という倦怠感。
 今そこで伸びている男が自分の欲求で行ったものか、あるいは単に使い走りか。前者なら別にいい。ただ後者で後ろに人数が居るとなると果てしなく事態が悪化するわけで、そうなった場合の自身の立場の弱さときたらないわけで。
 しゃがみ込んだまま、頬杖をついて考える。触らぬ神に祟りなし――と腰を持ち上げかけたところで、カバンの中の人間が身じろぎした。小さな呻き声を零した唇と一緒に、その瞼が持ち上げられる。状況を理解するのに要する時間が数十秒。彼は何となしに見下ろしていて、そこで彼女と眼が合った。朧だった焦点はすぐに点を結んで、そこに映ったのは読みやすい感情。困惑と恐怖。逃げ出そうにも狭いカバンの布に阻まれて、うまくいかずにもんどり打つばかり。パニックに陥りかけたのを見て取った瞬間、彼の指が彼女の口元を塞いだ。
 しー、と歯と舌の間から出す音の前に空いている方の人差し指を。口元の煙草からわずかばかりの灰が降り注ぐ。
「騒がないなら、離す。騒ぐなら、無し。オーケィ?」
 指を噛むぐらいしてくるのではないかと思ったが、そんなこともなく、彼女はこくこくと頷いたので、手を離す。確かに彼女は騒ぎはしなかった。代わりに目一杯に感情を貯めている。それが溢れたら、悲鳴でも上げそうな均衡。それともあっさり絶望に堕ちてしまうのか。どちらにしても知ったことではない。
「ど、どうするの……?」
 実年齢は思ったよりもっと下かもしれない、と思わせる幼さを滲ませた声。もっとも、女が総じて媚びる時に出す声は似たようなものでもある。とりあえず質問されたので、答える。
「別に」
 首を傾げて彼が言う。彼女の戸惑いに、ひらりと彼は手を振って、
「好きにしろよ」
 そこで腰を持ち上げた。
 放置された彼女に思い出したように彼が振り返る。
「やるよ」
 袋から抜けだそうとしている彼女の膝頭に当たって止まる、放り投げられた鉄の塊。
「……なんで?」
 惚けたように彼女が問うた。からかうように彼は言う。
「要るだろ?」
 そして、もう一度ひらりと手を振って、振り返らずに立ち去った。

 誰かが死んでも誰も気に止めない街。
 偽物すら、滅んで失せて消えたような、偽善者共の街のBGMは、それとサイレン。
――ドラムを叩くように、銃声が鳴り響く。

A town called hypocrisy
this idea catched from "mob strike"

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